事例 2 屋号の存続

経営者も気付かない
「地域一番店」の魅力
【シミズメガネ】

地域の一番店として地元で愛されるシミズメガネ。ビジョナリーホールディングスの子会社として再出発している。写真提供:ビジョナリーホールディングス

 関西出身の読者ならば、「シミズメガネ」というブランド名を聞いたことがあるのではないか。いまは子会社がメガネスーパーで知られるビジョナリーホールディングス(HD)に事業譲渡し、屋号を残したまま大阪府内で11店舗が営業を続けている。

 事業譲渡に至ったのは、価格競争の波にのまれた末の経営破綻が理由だ。

 シミズメガネの創業は1928年。家族で経営する街の小さな眼鏡店からスタートした。職人かたぎの創業者は地域で愛され、地元密着のお店として親しまれてきた。

 その後、眼鏡、サングラス、補聴器、コンタクトレンズの小売事業を展開し、成長を続けた。最盛期には大阪府内に約50店舗を構え、特に東大阪市では「地域の一番店」として、名をはせていた。

 経営に陰りが見えるようになったのは、2000年代後半。大手眼鏡小売りチェーンの進出が始まり、価格競争の波が押し寄せた。シミズメガネもそれに対抗するように、低価格路線をひた走った。

 しかし、大手チェーンに価格競争を挑んだところで、勝てるはずがなかった。

 結果的に、商品やサービスで差別化を図れたわけでもなく、価格競争でも敗れた。売り上げが激減し、経営を苦しめた。不採算店舗を閉鎖しても業績は改善されず、経営破綻に追い込まれた17年8月、事業譲渡した。

 では、なぜビジョナリーHDは、経営破綻したシミズメガネをあえて引き受けたのか。

 何より、地域の一番店として地元で愛されていたシミズメガネが持つ顧客基盤は魅力だった。また創業者から脈々と受け継がれてきた職人かたぎもあり、従業員のスキルも高かった。ビジョナリーHDの担当者は「規模の大小にかかわらず、地域の“眼鏡屋さん”は非常に高いスキルを持っている」と話す。

 これは、中小企業の経営者が意外と気付かない“魅力”だ。

 特に小売店は、ただ“売る”だけではなく、大手チェーンのようなマニュアルにはない、地元に密着しているからこそできる、きめ細かい消費者サービスを行っている。だからこそ、地域で長年生き残ってきたのだ。

 今回のシミズメガネの教訓は、競合との競争は価格ではなく、従業員スキルなど独自性で勝負すべきだったということ。

 オーナーは去ったが、地域での知名度を重視して、シミズメガネの屋号は残したまま営業を続けている。親会社から経営ノウハウの支援を受けつつ、地域の一番店としての魅力をさらに磨くため、シミズメガネは再出発を図った。