>>(上)より続く

「キムタクに似ている」と言われ
バランスを崩した高校時代

 Cさん(35歳男性)は木村拓哉のファンである。20年来の筋金入りだが部屋に彼のポスターが1枚貼ってあるのと、彼の出演作品を鑑賞するくらいで、あまり金を落とす類いのファンではない。

 筆者は彼が高校生だった頃から知っていて、彼がある時期に徐々に木村拓哉に傾倒していったのをよく覚えている。Cさんは表情の作り方が少し木村拓哉に似ていて、仲間内で「ちょっとキムタクに似ているところがある」と話題になった。あくまで似ている“ところがある”であって、直接“似ている”と評されているわけではない。しかも似ているのは表情の作り方その一点においてのみで、顔は似ても似つかないのである。

 しかし世紀のイケメンアイドルに「似ている」と言われれば、当時多感な時期まっただ中のCさん、悪い気はせず、むしろモロに影響を受ける。その気になったらしいCさんはキムタクと同じ髪形となり、所作がなんとなくクサくなった。それまでは自然にしていたらたまたまキムタクに似ていたのだが、意図を感じさせる所作は残念ながらキムタクから遠ざかっていった。

 そのようにしてしばらくの間はバランスを崩していたCさんだったが、今度は「キムタク意識しすぎじゃね?」という仲間内の評を受けて自省し、わざとらしい所作から脱却して自然体を取り戻した。

「あれは黒歴史ということで(笑)。自分がキムタクにまったく似ていないというのはようやくわかりましたが、『似ているところがある』と言われたのがきっかけで、一気に彼のファンになりました。ファンというか、なんでしょう、自分にとって理想の男性像、目指すべき男性像がキムタクになったのです」(Cさん)