中国共産党にとってみれば、事前に見栄を切って楽観的な目標設定をし、結果的にそれを下回ってしまう事態と、事前に消極的な目標設定をし、結果的にそれを達成する場合と、どちらが正統性の確保に有利になるかと言えば疑いなく後者であろう。

 従って、筆者自身は成長目標を過去2年よりも下方に設定するのではないかと見ている。

 現実的には6.2〜6.3%といったところか。仮に「6.0%前後」という前年よりも0.5ポイントの下方に設定した場合、中国当局として経済の先行きを相当不安視している現状を見いだすことが可能となろう。

 その場合、本連載の主旨からすれば、「成長」以外の軸から正統性の確保に乗り出す必要性が出てくる。例えば、格差、教育、医療、戸籍といった分野における制度改革を一層推し進めることで社会の「公正」を拡大・深化させていくといった具合である。

 この数字が公表されるまでにあと1週間あるが、不確定要素も残る。中国と米国の間の貿易交渉である。特に昨年12月初旬にアルゼンチンで開催されたG20首脳サミットに際して実現した米中首脳会談以降、米中当局は3月1日という期限を目標に、知的財産、市場開放、貿易収支、技術移転、構造改革、外資参加といった分野において集中的な協議を続けている。 

 筆者が本稿を仕上げている現在(2月25日)、ワシントンで4日間に渡って開かれていた第7回米中経済貿易ハイレベル協議が終了し、「実質的な進展」(新華社通信、2月25日)を遂げたとされる。この期限を絶対視せず、延期の可能性を示唆していたトランプ大統領も自らのツイッターで同協議に前向きな評価を下すと同時に、同期限を延期し、最終的に習近平国家主席との直接交渉で同協議を結論付けるとコメントしている。とはいうものの、仮に今後米国側が、中国側が指し示す提案に納得できない場合、どこかのタイミングで中国商品に対して追加課税を発動する可能性も否定できない。

「米国との貿易戦争の中国経済への影響は非常に大きい」

 前出の姚洋北京大学国家発展院院長は筆者にこう語った。

(国際コラムニスト 加藤嘉一)