「成績優秀な大学生が自宅やオフィスをお掃除します」。フロリダ大学の学生が創業した清掃サービス会社、スチューデント・メイド。創業から10年、“非常識なまでに徹底した、社員を大切にする経営”により、全米で大評判となった同社の採用面接には、今やミレニアル世代を中心にさまざまな世代が押し寄せるという――。この連載では、同社の創業者、クリステン・ハディードの著書『離職率75%、低賃金の仕事なのに才能ある若者が殺到する奇跡の会社』(クリステン・ハディード著/本荘修二監訳/矢羽野薫訳)の記事からその驚くべきストーリーやノウハウを紹介し、同書にインスパイアされた各回で活躍されている方のインタビューを掲載していきます。
フィードバックにはFBIメソッドが有効
ボブ・チャップマンがCEOを務めるバリー・ベーミラーは、ミズーリ州セントルイスを拠点とする設備エンジニアリング企業だ。資本金は30億ドル、全世界に1万2000人以上の従業員を擁する。あるときチャップマンは、アスペンに所有する牧場で私的なカンファレンスを開催し、私は講演者として招待された。私は会社を経営していなかったら、彼の下で働きたかった。
彼は自分の会社について説明する際に、製造している機械の話から始めるのではなく、こんな話をする。「私たちの成功は、私たちが人々の人生にどのように関わるかによって決まる。私たちがやっているすべてのことが、そこにつながっている」
私がバリー・ベーミラーを敬愛する理由は、彼らが行うすべてのことが、従業員の成長を後押ししているからだ。同社が長年行っているコミュニケーションの研修は、会社だけでなく、家庭でも対人関係を劇的に変えることで知られている。
研修の成果は目覚ましく、会社はバリー・ベーミラー・ラーニング研究所を設立して、3日間の研修プログラムを社外にも提供するようになった。受講者は社内外で延べ1万人以上。幸運なことに私もその1人だ。この研修で、私はFBIを学んだ。もちろん、あのFBIではない。フィードバックを与える際に、シット・サンドイッチ方式よりはるかに効果が高いアプローチのことだ。
大半の人が誰かにフィードバックを伝えるときに直面する問題は、肯定的なメッセージの間に要点を挟むシット・サンドイッチ方式でも、それ以外のやり方でも、受け取る側に自分の振る舞いを変えようと思わせる伝え方になっていないことだ。
本当に効果的なフィードバックには、次の3点を意識したコミュニケーションが必要だ。すなわち、自分(フィードバックを与える側)はどんな気持ちなのか。そのような気持ちにした相手(フィードバックを受け取る側)の具体的な振る舞いとは何か。その振る舞いが会社や人間関係などにどんな影響を与えているか。この3点をわかりやすく伝える。
気持ち(Feeling)、振る舞い(Behavior)、影響(Impact)のFBIだ。
FBI方式のフィードバックは、例えば次のようになる。
「昨日の午後、あなたが打ち合わせに30分遅れたことに私は失望している。これからあなたを信頼していいのか、私はわからなくなった」