津川興産にとっても、融資を受けられれば資金繰りが助かりますから、じゃんじゃん借りていました。
結局、津川興産は長期借入金を返済しきれず、短期借入金を増やして長期の返済に充てていきました。さらには、その長期の返済さえ滞らせ、メイン銀行からの短期融資に依存する状態になっていました。
ところが、そのメイン銀行が、地元の第一地銀によって吸収合併されたのです。津川興産の取引支店は残ったものの、第一地銀に変わりました。その時点で、支店長以下のスタッフも変わりました。そして合併後、新たな支店長が津川興産に来て、津川社長に言ったのです。
「御社へのこれまでの融資を見直しさせていただきます。次の新たな短期借入金の融資はできかねますので、どうかご了承ください」
通常ではありえない無謀な融資が常態化していたのですから、無理もありません。
いくらでも貸してくれる
そんな銀行は危ない
「えっ、そんな……」
困ったのは津川社長です。短期借入金ありきで回っていた資金繰りをどうすべきかという問題に直面しました。そう簡単に業績が大幅改善することはなく、間もなく長期も短期も、返済金が不足することは明らかでした。
「急にそんなことを言われても困ります」
津川社長は、新しいメイン銀行に泣きついたものの、事態が好転することはありませんでした。
すると、メイン銀行は、津川興産への融資を回収見込みのない不良融資扱いとみなし、関連するサービサー(債権回収会社)に債権を譲渡することにしました。津川社長も了承したのです。即倒産よりもマシだと思ってのことだったそうです。
結局、津川社長は、サービサーと返済交渉を進めることになりました。そして、保有物件の売却、個人資産での資金づくり、役員報酬の大幅カットなどを行うことで、なんとかその難局を乗り越えたのです。