しかし、一度とはいえ、返済不能による債権譲渡の履歴があると、銀行から新たな融資を受けることは当面不可能です。

 それでも、津川興産は、なんとか生き残っただけでも御の字でした。

 津川興産は、今でいうところのゾンビ企業だったのです。借入金ありきで生き永らえていたわけです。しかも、その状況に甘え、経営改善を怠っていました。

 そこに、取引銀行の吸収合併が起こったわけです。

 同じような状況は、津川興産だけではありません。むしろ、全国至る所に同じようなゾンビ企業が存在するはずです。

「この銀行はいくらでも貸してくれるから、まだまだ大丈夫」などと思っていると、危機は突然やってくることになります。

 これから地銀の再編はどんどん進みます。だいたい、いくらでも貸すということ自体が、銀行業としてはおかしいのです。それだけ、その銀行は危ない橋を渡ってでも融資をするという危険な経営状態にあるわけです。

 それがわからずに、やみくもに借り続けるのは、経営者として失格です。

 取引している銀行で、吸収や合併が起こると、資金事情が一変します。だから、「借りられるから借りるという無謀な借り方」をしてはいけません。