パスウエイとペイン・ポイント

 小売業者は昔から、自分たちの仕事は、単純な3つの至上命題を果たすことだと定義してきた。すなわち、自社のターゲット顧客が買いたいであろうと思われる商品を店に置くこと、店舗内に何があるのかをよりよく知ること、そして見込み顧客が入店したら、商品を買うことが魅力的で簡単なことだと相手に感じさせることの3つである。

 しかしオムニチャネルの世界では、小売りの仕事はより複雑となる。

 まず商品自体を、各個人あるいは小集団の好みに合わせて、もっと簡単にカスタマイズできるようになる。また、買い物客の商品知識は、その小売業者がマーケティング戦略で発信した情報だけに頼っているのではなく、オンライン上の専門家のレビューあるいは〈フェイスブック〉や〈ツイッター〉での友だちのお勧め情報にも頼っている。さらに、オムニチャネルのショッピング体験とは、単に店舗に行くことだけでなく、ネット上でさまざまな売り手を検索し、価格を比較し、時間と手間のかからない無料の返品をすることなども含まれる。

 今日の小売業者は、このような買い物時のパスウエイ(通り道)の各地点で、数々の精密ツールを活用している。

 たとえば認知度を高める仕事について考えてみよう。この仕事はこれまで、大半をマスマーケット広告やプロモーションなどの類に頼ってきた。今日のマーケティング担当者は、顧客の携帯端末にクーポン・コードや割引情報を送信できる。また、個々の顧客に合わせてその商品がヒットする検索用語を最適化したり、その顧客にマッチした地域限定キャンペーンを紹介したりすることもできる。

 さらに、〈フォースクエア〉(位置情報に基づいたSNS)など外部のプラットフォームから特定の店舗にチェックインした顧客だけを対象に、限定的な割引を提供することもできる。このような「実現リスト」は日ごとに長くなっている。

 そうしたツールをパスウエイの各地点で活用することにより、小売業者は(日々精密化されていく)細かい条件で絞り込んだ何パターンものターゲット顧客を見つけることが可能となり、訴求力のある相互交流を生み出せる。