おりしも今シーズンの開幕を直前に控えた時期に、スペイン紙が寝耳に水のニュースを報じた。久保が18歳となる今年6月に、バルセロナへ復帰することでFC東京と基本的に合意した――なるニュースを、クラブ間の交渉すら存在しないと大金社長は全面的に否定している。

「(18歳になれば)国際間移籍ができる、ということはルール的にも間違いないし、もしかしたらそういう話があるかもしれないけど、現時点で特に何かが決まっている、ということはありません」

 昨年2月に出席した2泊3日のJリーグ新人研修。最終日に提出した、5年後の自分に宛てた手紙の中身に対して、久保はこんな言葉とともに言及している。

「何かもやもやした表現で申し訳ないんですけど、サッカー選手として大きな存在でありたい、というのはありますね。久保選手を見てサッカーを始めました、と言ってもらえるような。より大きな影響を周囲に与えられるような、ひと言で表現すれば『すごい選手』になることが僕の目標でもあるので」

 あれから1年ちょっと。自分の力で壁を乗り越えた久保は、ようやく「すごい選手」になるためのスタートラインに立った。眩い存在感こそ放っているものの、確固たる結果はまだ何も残していない。湘南ベルマーレとの第2節でも、惜しいシュートを放ちながら相手GKに防がれてしまった。真価を問われる挑戦は幕を開けたばかりだからこそ、大金社長も言葉に力を込める。

「今は建英自身もすごく安定してサッカーに取り組めていると思うので、クラブとしてしっかりサポートしていきたい。今現在に満足することなく、さらに上を目指していくことが一番大切なので」

 長谷川監督が描く序列の中で、格上げされたからだろう。6日に開幕したYBCルヴァンカップで、久保は柏レイソルとのグループリーグ初戦のメンバーに入らなかった。サガン鳥栖と対峙する10日のホーム開幕戦で、シーズン初ゴールを含めた結果を味の素スタジアムのピッチに刻む光景を思い浮かべながら、覚醒の感を漂わせる久保は心技体を高めながらキックオフの笛を待つ。