月例経済報告でも使い続けた
“高い伸び率”の「公表値」

 第2の問題点は、政府自身が「月例経済報告」の関係資料の中で、毎月勤労統計の「公表値」の前年比を18年9月まで使い続けたことである。

 多くの民間エコノミストが、「公表値」の前年比は高過ぎて実態とは違うと早々に見切りをつけていたにもかかわらず、である。

「月例経済報告」を作成しているのも内閣府の経済分析のプロである。数字のおかしさに気づかなかったはずはない。

 おかしいけど「良すぎる」方向におかしいのだからまあいいか、といった感覚で「公表値」を使い続けていたのだとしたら、アベノミクスへの忖度と言われても仕方がない。

 これは厚労省ではなく内閣府の問題だが、いずれにせよ政府側の落ち度である。

 第3の問題点は、国会論戦の中で、厚労省の対応が不必要にディフェンシブに見える点だ。

 典型的な例が、「参考値」の実質賃金の公表を拒み続けていることである。

 専門家による慎重な検討が必要というのがその理由だが、理由になっていない。実質値は、名目値から消費者物価の上昇分を差し引けば機械的に出るのであり、専門的な知見は必要ない。

 一方で2018年は、実質賃金がマイナスでも、それを補って余りある大幅な雇用増が見られたので、総雇用者所得は明確に改善した。この点は、安倍首相が繰り返し述べている事実に間違いはない。

 実質賃金の伸びがマイナスでも、雇用・所得環境が良好という判断は変わらないのだ。

 無用にディフェンシブな姿勢は、何か都合の悪いことを隠しているのではという疑念を抱かせたり、隠ぺい体質という印象を強めたりするだけだと思う。

 今回の統計不正は純然たるガバナンスの問題である。

 しかし、「アベノミクス偽装」という批判を招いた背景として、月例経済報告における統計の利用の仕方など、政府側に問題があったことも否定できない。

 統計は、どう作るかが大事であると同時に、どう使うか、どう使ってもらうかが、極めて重要なのである。

(みずほ総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト 門間一夫)