観客がハッピーになる手段は「勝つこと」

堂場 毎年優勝争いに絡んでくるようなチームって、結局、お客さんが自然に集まるんですよね。

高田 私はいつもこう言ってます。試合の勝ち負けは手段であって目的じゃない。サッカーの、スポーツの、本当の目的は違う。人をどれだけ幸せにできるか。子どもたちがどんな夢を持てるか。高齢化社会でシニアの方がどれだけ幸せな老後を過ごせるか。地方をどうやって活性化するか。これが目的です。サッカーでも野球でも、勝ち負けは手段だと、本当に思っています。でも、手段だから負けていいというものじゃない。勝たないと新しいお客さんが集められないという一面もありますから。

堂場 一番単純な基本の基本で、観客がハッピーになる手段はやっぱり勝つこと。

高田 目的と手段の両輪で、うまくまわるのが理想ですね。

堂場 経営側と現場の関係がギスギスするのは良くない。かといって、うちは負けてもいいや、というのでもダメ。じゃあ、強いだけでいいのか、客が集まればいいのか……。最近ずっと考えています。お客さんを楽しませたいと同時に、選手にとっては真剣勝負の場、強いチームの一員として戦いたいはず。プロスポーツって、その辺のせめぎ合いと共に存在しているのでしょうけど、完全にみんなが満足している競技、チームって、なかなかないと思います。どこかに必ずきしみが出てきそうです。僕は経営者じゃないので、自分の考えるところを小説に書いて、今回は『ザ・ウォール』という作品になりました。

高田 『ザ・ウォール』に出てくる野球チームのオーナー・沖さんは、集客重視で変わった球場を作ったり、ユニークなサービスを考える。一方、監督の樋口さんは勝つためのチーム作りに苦労される。非常に興味深く、面白いお話でした。

堂場 ありがとうございます。

握手する二人Photo by M.I.

高田 今季V・ファーレンは、リオ五輪の日本代表監督だった手倉森誠さんを新監督に迎えました。チームがまた生まれ変わりつつある姿を感じています。

堂場 今季もぜひ、Jリーグに旋風を巻き起こしていただきたいですね。

高田 僕も歳が歳ですから、あまり長くいちゃ駄目なんですけどね(笑)。

堂場 若い世代への継承も、もちろん必要でしょうが、社長にはまだまだやっていただかないと。波乱に富んだ戦いぶりで、今季もぜひ我々を楽しませてください!

高田 明(たかた・あきら)/1948年長崎県平戸市生まれ。大阪経済大学経済学部卒業後、機械製造メーカーへ就職し、通訳として海外駐在を経験。実家のカメラ店「有限会社カメラのたかた」の支店経営を経て、1986年に独立し「株式会社たかた」を設立。1999年「株式会社ジャパネットたかた」に社名を変更。1990年のラジオショッピング開始を機に、テレビ、紙媒体、インターネットなど通販事業を展開し、2015年、66歳で代表取締役社長を退任。同年、「株式会社A and Live」設立。2017年、サッカークラブチーム「株式会社V・ファーレン長崎」代表取締役社長に就任。(高の字は “はしご高”)
堂場瞬一(どうば・しゅんいち)/
Vファーレン高田明と作家・堂場瞬一が語る「人が集まるスタジアム」の作り方(下)
1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年秋『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。警察小説とスポーツ小説の両ジャンルを軸に旺盛な執筆活動を続ける。警察小説では「警視庁犯罪被害者支援課」「警視庁追跡捜査係」「ラストライン」他、人気シリーズ多数。スポーツ小説では、箱根駅伝「学連選抜」がテーマのロングセラー『チーム』をはじめ、マラソン、競泳、ラグビーなど様々な競技を題材に執筆。野球小説では、新刊『ザ・ウォール』に登場するプロ野球チーム「スターズ」シリーズとして、『焔The Flame』『ラストダンス』『20』を発表している。2019年2月末現在の著作数は133作品。