中小企業の社長は、このような言葉を聞くと、とても気持ちよくなってしまいます。そのことも銀行はよくわかったうえで話しているのです。

 それに、取引先に対する融資シェアの増減は、銀行内の評価に大きな影響を与えます。銀行員にとっては、取引先のことよりも、こっちのほうが重要であり、一大事です。だから、銀行員はみんな融資シェアを拡大したいと考えています。

 逆に、融資シェアが縮小することは、どうしても避けたい事態なのです。

他行の支店ができたら
交渉をするチャンス

 四国の地方都市に、それまでなかった銀行の支店が新たに開設されたことがあります。仮に、四国共栄銀行とします。

 また、その地域で、それまで勢力を強めていた銀行を瀬戸第一銀行とします。どのようなことが起こるでしょうか。

 増村産業(仮名)は、その地域で瀬戸第一銀行をメインとして融資を受けていました。増村産業では、最近ようやく他行を交えての金利交渉に動き出しました。

 瀬戸第一銀行の対応も、これまでとは少し違う様子になってきました。ライバルである四国共栄銀行の支店ができたからです。

 瀬戸第一銀行の担当者が来て、こう言ったそうです。

「最近、四国共栄銀行が来ていませんか?」

 実際、挨拶程度では来ていたので、「まあ、来てないこともないですよ」と、含みを持たせて返答しました。

 すると、数日後に、また瀬戸第一銀行の担当者が来ました。

「いや実は、これまでの金利を見直しさせていただこうと思いまして」

 こちらからお願いもしていないのに、金利を下げてきたのです。年間の額でいうと、約200万円の金利減です。