
坂野潤治著
(講談社/2010年)
(オリジナル版の出版は2001年)
“二大政党制”のことではいつも近代以降の英国が引き合いに出されるが、実は昭和初期のわが国に、なんとかそれが成り立ち、そしてあえなく失敗に終わった先例がある。二大政党制が比較的うまく機能してきた欧米諸国の経験だけではなく、実を結ばなかった自国の経験の方にもっと目を向けるべきだと著者は言う。
また、「政権の維持拡張のためには何物も顧みぬ」と吉野作造が当時の立憲政友会を批判したことに関連して、1960年代から70年代にかけて相対的に良質だった自民党がその後は政友会に近づいているとも指摘する。
歴史に学ぶことで、より的確な病理判断ができそうだ。そういえば、後藤新平や石橋湛山が厳しく批判した地方議員の思い違いは今日でも変わらない。
(早稲田大学公共経営大学院教授 片山 善博)