「本当に任せて大丈夫なのか…?」

 そう不安を感じたA部長は、どのような作業かについて詳細を説明すると、

「そういうの、わりと得意なんです」と自信たっぷりに答えたので、仕事を任せてみた。

 ところが、B君の仕事の進め方を見るA部長の目には、彼の経験不足は明らかだった。その後、彼が見当違いなことをしでかしたため、結局、他のメンバーが尻ぬぐいをすることになったのである。

 さらにB君の件はこれにとどまらない。大口受注の可能性がある新規の大手取引先の担当を誰にするかという話になった時も、「私にやらせてもらえませんか」と、先輩社員たちを差し置いて自ら志願したのだ。

 A部長は「彼の積極的姿勢は評価できるものの、まだまだ経験不足であり、日頃の仕事ぶりからして知識も十分でない。それなのに、彼はなぜこれまでの失敗経験の数々から不安にならないのかがわからない」と感じたそうだ。

 とはいえ志願した以上、担当させないで気まずくなるのを恐れたA部長は、B君に思い切って任せてみたところ、彼は案の定、初歩的ミスをしてしまう。結局、相手方の信頼を得られず、上手くいかなかったそうだ。

 その後もB君には同じようなことが続き、何度も期待を裏切られるばかり。A部長はB君が配属されて以来、ずっと見てきたこともあり、今ではだまされることはなくなったが、なぜ何の根拠もないままB君は「できるアピール」するのか不思議で仕方がないという。

 実は心理学的に見ると十分な理由が3つあるのだ。

 本連載の第5回「能力の低い人は、自分の能力が低いことに気づく能力も低い」では、能力の低い人ほど自分の能力を過大評価する傾向が強い旨を解説した。

 仕事ができない能力の低い人は、自身の仕事ができないという現実をきちんと理解していない。そのため、実力からかけ離れた「できるアピール」をしてしまい、その結果として、任された仕事をこなせないということになりやすいのである。

 自分の仕事力の現状を把握していれば、そんな無謀な「できるアピール」はしないものだが、自分の現状を把握する能力も低いため、過大に「できるアピール」をしてしまうのである。それが、「できるアピール」する人ほど仕事のできない「残念な人」であることが多い理由だ。