石田氏は一時期、地銀の検査を統括する立場にいたが、当時の検査対象の一つが南都銀だった。そのときに南都銀の橋本隆史頭取と接点を持ったという。

 18年7月に森氏が長官を退任すると、後ろ盾を失った石田氏も金融庁を去り、経営共創基盤に出戻った。そこで、以前から経営のアドバイザーを外部から積極的に登用していた橋本頭取と、自身の再就職先を模索していた石田氏との趣旨が合致し、今回の人事が実を結んだという。

懸念される現場への悪影響

 古巣もこの人事には「驚いた」(前出の金融庁幹部)が、地銀改革の観点から「金融庁の上層部も期待している」(関係者)ようだ。

 だが、楽観ばかりもしていられない。気掛かりなのは、南都銀側の現場のモチベーションだ。この懸念に対し、「対策は取ってはいない」(経営企画部)とし、現段階では現場から不満の声は聞こえてこないという。ただ、昨年代表取締役に就いた「有望株」(南都銀関係者)の役員が、石田氏の就任と同時に、1年で退任するという“政変”も起きてはいる。

 昨今、地銀全体の業績悪化が著しく、県内唯一の地銀として強固な経営基盤を持つ南都銀でも、17年からの中期経営計画で「変革と挑戦」を掲げ、行員の意識改革に着手中だ。石田氏の登用はこの流れを象徴する出来事に映るが、数字が伴っていないのが現状だ。

 本業のもうけを示す「業務純益」は、17年3月期の147億円から、18年3月期は106億円となり、今期は4~12月までの累計で52億円と振るわない。

 4月以降、石田氏は経営企画や人事などの中枢機能に加え、デジタル推進という新領域を同時に所管する。革命に反発は付きものというが、今回の異例の人事を含め一連の改革が実を結ぶか否かは、“扇の要”を担う石田氏の手腕次第といえる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)