私も一時期、担ぐ験がどんどん増えていた時期がありました。次から次へと様々な験を担ぐようになって、そんな自分に疲れ始めたのです。神経質すぎたり、潔癖すぎたりして疲弊してしまうのと似ています。

 そうなるとどうでしょうか?疲弊する上に、むしろ不安はどんどんと増していきます。たった1つでも験を担ぎ忘れた不安に、がんじがらめになっていきます。そもそも験を担ぐとは、先述したように、そうすればいい結果になったという経験からその行為を習慣化することであるはずなのに、むしろ脅迫概念になって、それをしないと悪いことが起こると強く思い始めるようになります。

 心の病一歩手前の状態です。

 そうなり始めたらどうすればいいのでしょうか。窮地に追い込まれた私が試みたのは、ショック療法です。意識して、1つひとつ験担ぎの呪縛の鎖をほどきにかかるしかありません。清水の舞台から飛び降りる覚悟で「やらないようにする」のです。例えば朝起きた時に、これまでとは違う足から一歩を踏み出すようにします。

 大げさだと思われるかもしれませんが、それほどに呪縛は強いものです。

 そうやって1つの習慣をやめて、数日様子を見る。何も悪いことは起こらない。日常は何も変わらないということを確認して、次の験をやめます。そうやって1つひとつ験担ぎをほどいていきます。

 今度はやめることの習慣化ですが、すべてやめる必要はありません。負担にならない行動、昔から真に習慣化している行動までやめる必要はありません。要は、自分の気持ちが楽になればいいのです。

「和魂洋才」の考え方、生き方は常に重要です。何事も行きすぎはいけません。バランスのよい人生こそが最強です。そのためにも、どちらにも偏りすぎずに和と洋のいいとこ取りをしてみてください。

 科学的アプローチも論理的思考も、神頼みも等しく使いこなしてこその「気持ちの良い人生」ではないでしょうか。

(明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授 野田 稔)