面接などを行う精神療法の中で、うつ病や不安障害の治療に使われているのが、認知行動療法だ。ノウハウが標準化されており、日常生活での「プチうつ」「プチ不安」の解消にも効果が大きい。(週刊ダイヤモンド2012年7月28日号特集「不眠・不安・疲労 職場と家庭のうつ 全対策」より)

「仕事のミスで上司に怒られて、気分が落ち込んだ」「人前で恥をかかされ、屈辱を味わった」「理不尽に批判され、やり場のない怒りを感じた」──。

 日々の生活や仕事の中で、気分が落ち込んだり、不安や悩みで心がつらくなったりすることは誰にでもある。

 そんなとき、自分(あるいは相談相手)の気持ちを切り替える方法として、「認知行動療法」が注目されている。

 認知行動療法とは、他人との対話を通じて、悩みなどを解決する精神療法(心理療法)の一つ。

 悩んでいるときの気持ち(思考の偏り)や、「思い込みをしやすい」などの“心の癖”に働きかけて、気持ちを楽にしたり、行動をコントロールしたりする方法だ。

 1970年代に米国でうつ病治療のために開発され、欧米を中心に発達した。不安障害やストレス性障害、摂食障害など、他の精神疾患についても、治療や再発予防の効果が認められている。

書く作業で自分を客観視
気分を改善するコラム法

 日本でも80年代から注目され、2010年にはうつ病の治療方法の一つとして、健康保険による治療が認められた(自由診療で実施している医療機関もある)。

 認知行動療法は、他の精神療法に比べ、ある程度のノウハウが標準化、マニュアル化されているのが特徴だ。

 このため、使い勝手がよく、職場や学校などでのストレス対策に使われている。個人が、日常生活で生じた、つらい気持ちを改善する方法としても活用できる。

 認知行動療法は、大別して、「気分を改善する技法」と「行動を改善する技法」の二つのアプローチで治療する。