次に、(2)新しい社内外の取締役の選任についてはどうか。

 ゴーン元会長時代には、西川廣人・日産社長以下執行役員53人全員の「人事権」と「報酬決定権」はゴーン氏が握っていたため、日産には指名委員会がない。

 特別委の提言で示される予定の「指名委員会等設置会社」へ移行する予定だが、現段階では、日産経営陣が新しい社内外の取締役を選任することになる。

 つまり、(1)の特別委の専任プロセスで、日産経営陣が榊原氏を選んだ訳ではなく、(2)の取締役の選任プロセスで、日産経営陣が榊原氏を選ぶ候補として考えているということだ。

 日産経営陣が、榊原氏の将来の取締役選任ありきで特別委委員が決められたとはいえないので、榊原氏の取締役会議長の就任プロセスは「自分が自分を選んだ」状態であるとも言い切れない。

 従って、就任プロセスは、法律上クリアしているということになろう。

「仲間うち」人事と受け取られかねない

 もっとも、このプロセスについて、専門家の間でも疑問の声が上がっている。

 企業統治に詳しい高橋明人・弁護士は、「あえて社外取締役を取締役会議長に据えて、自由な意見を取り入れようとしていることは先進的な取り組みだ」と評価する。

 その一方で、「これだけ世間を騒がせた事件の性質に鑑みれば、もっと多様な人材を登用し、クリアな体制にするべきだ。特別委委員と取締役会議長が重なっていることは、仲間うちで選任プロセスが進んだと受け取られかねない」(高橋弁護士)と言う。

 ゴーン氏による不正問題が司法の場でどう裁かれるのかは定かではない。それでも、ゴーン氏に権力が集中し、日産のガバナンスが機能不全に陥っていたことは紛れもない事実だ。そして、その機能不全を放置した責任は日産の経営陣にあることはいうまでもない。

 日産が本気で、ガバナンス改善を最優先するならば、「李下に冠を正さず」の姿勢が求められるのではないか。