完璧を目指さないノート術

 ノート術とか仕事術とかいうものは、えてして読者に完璧を求めるものだ。いや、むしろ逆に、自らを完璧に律したい読者が、そのような本を求めているというべきかもしれない。寸分の漏れもないスケジュールを立て、それを高いモチベーションで予定通りにこなし、成功する。それは、自己啓発書やビジネス書を読む読者たちの理想だろう。

 だが、完璧な人間はいない。少なくとも、ライダー・キャロル氏は注意欠陥障害(ADD)を持っている自分が完璧ではないことから出発し、バレットジャーナルを発案した。それが受け入れられていることは、完璧な人間がいないことの証左ではないだろうか? 少なくとも私は完璧ではないし、そのことをよく自覚しているつもりだ。私がバレットジャーナルを知る前から、自己流でバレットジャーナル的な手帳の使い方をしていたのはそのせいだ。

 キャロル氏は、『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』で、「完璧を目指さない」ことを強調しているし、バレットジャーナルは人間が完璧ではないことを前提としたノート術なのだ。

1日を過ごした意味を再確認でき
達成感を得られる

 たとえば、「企画書を書く」など立てたタスクが実行できなかったとき。普通の人は自己嫌悪に陥るだろうが、バレットジャーナル・ユーザーは落ち込む必要はない。そのタスクを翌日なりに回せばいいだけだ(これをマイグレーション〔移動〕と呼ぶ)。マイグレーションにはタスクを再検討する意味もある。よく考えてみると、タスクが不要だったりすることもある。

 逆に、達成できたタスクは上に横線を引くのだが、ノート1冊に仕事・プライベートすべてのタスクがまとまっているから、もしあなたがどれほど非効率な毎日を送っていても、ノートは達成済みのタスクでいっぱいになり、1日を過ごした意味を再確認できる。「ああ、今日もダラダラ過ごしてしまった」と頭を抱えるのは、おそらく間違えだ。きちんと振り返れば、今日のあなたは1日分成長しているに違いない。

 完璧な人間はいない。人の脳には、仮にADDなどのハンディがなくても、どうせ限界がある。ならば完璧を目指さずに、脳への負担を楽にしよう……。私にはそれがバレットジャーナルの本質に思える。

 あなたは完璧ではないが、あなたの1日はとても有意義なものだった。明日も気楽にがんばろう。バレットジャーナルは、ユーザーにそう語りかけてくれる。