先にBBCやガーディアン紙といった、英国メディアの話から始めるほうがわかりやすいでしょう。英国メディアが「ユリ・ゲラーがメイ首相の考えを曲げてみせるらしいよ」というニュースを報道する真意は「風刺」です。そしてこの風刺は、英国の政治報道では非常に重要な手段と位置づけられています。

 メディアの本来の役割は、国民の「知る権利」に応えることです。一方で、政治報道には難しさがついてまわります。1つは情報量の非対称性で、政治家や官僚が隠している情報なり本音なりが多すぎること。報道される側が常に有利な立場にあって、逃げ切りやすいという状況があります。

 そしてもう1つ、政治にはすぐに解決できない難しい問題が多いことです。英国のEU離脱もそうだし、日本で言えば働き方改革の問題も、沖縄の基地問題も、年金問題もそうです。「じゃあ、どうすれば解決できるのか」というカウンターオピニオン、言い換えると十分対抗できるレベルの言説を打ち出すことが難しいのです。

「風刺」は難解な政治問題を
わかりやすく解説する武器

 そこで、英国メディアが武器として使うのが風刺です。解決不能で批判の切り口が設定しにくい政治問題に対して、「ユリ・ゲラーなら国会議員の考えを曲げられるらしいぞ」とやるわけです。

 日本にたとえて言えば、働き方改革で国会が紛糾したら、風刺漫画に厚生労働省の若手官僚を登場させ、「これで今日も24時間勤務だよ」とやればいいし、年金問題だったら、高齢者に「はて、舛添大臣が解決したんじゃなかったっけ?」と言わせればいい。実際は、舛添大臣にも長妻大臣にも解決できなかった政治の難問ですが、そこに一石を投じるのが風刺の役割です。