モディ首相を応援する市民Photo:AP/AFLO

 インドでは今年4月に、5年に一度の総選挙が実施される。2014年に行われた前回の総選挙では、『モディ旋風』とも呼べるほどのモディ氏個人に対する人気が後押しする形で、与党インド人民党(BJP)が単独で議会下院(ローグ・サバー)の半数を上回る議席を獲得するなど地滑り的な大勝利を収めた。

 同国において単独政党が議会下院で過半数の議席を獲得したのは30年ぶりであり、シン前政権の政権末期にかけて景気減速に拍車がかかるなか、10年にわたるグジャラート州首相として同州の高い経済成長を実現させたモディ氏の手腕に期待が集まった。モディ政権の下では、『モディノミクス』と称される一連の経済政策の取り組みが進められてきたが、今回の総選挙は『モディノミクス』に対する国民からの評価と捉えることもできる。

 ただし、このところのインド経済においては不透明要因が多くなっているのが気掛かりである。その最大の要因は、モディ政権誕生後の15年初めに行われたGDP(国内総生産)統計の改定である。当時の改定では基準年度が改訂されたほか、それまでのインドのGDP統計では供給サイド(要素費用ベース)で算出されていたが、改訂後は需要サイド(市場価格ベース)で算出されるなど主要国と同じ仕組みで行われるようになった。しかし、新基準に準拠したGDP統計はモディ政権発足直前の2012-13年度以降のみ作成され、それ以前のGDP統計との間で断層が生じる事態となった。