先輩の怒鳴り声に
ショックを受け新人が失神

 そして午後からは唱和タイムだ。5班に分かれた新人たちは、A課長やコーチ役の先輩社員の後に続き、「いらっしゃいませ!」「申し訳ございません」「ありがとうございました!」などとお辞儀をしながら、大きな声で1人100回ずつ叫び続けた。

 声が小さいと「もっと声を出せ!」等と叱責し、何度もやり直しをさせた。

 いよいよBの番が回ってきた。

「いらっしゃいませ…」

 今にも消えそうな声だった。すかさず先輩が言った。

「何だその声は!幽霊か?お客様が気持ち悪がって帰っちまうぞ!やり直し!」

 3回やり直しをさせられたところで、Bは音を上げた。そして泣きながら「もうこれ以上、声が出ません」と訴えた。

 ところが先輩は意に介さず、さらに怒鳴り声が響いた。

「言い訳するな!もっと本気出せ!」

 その時であった。先輩の叫び声が聞こえてきた。

「A課長、大変です!B君が口から泡を吹いて倒れました!」

 A課長が駆け付けると、Bは失神して倒れていた。先輩の怒鳴り声でショックを受けたらしい。大急ぎで救急車を呼び、近くの総合病院へ運ばれた。A課長から報告を受けたC部長は、B宅に連絡を取った。

 Bは病院に到着後、すぐに意識を取り戻した。医師からどこも異常なしという診断結果を聞き、A課長は一安心。そして家族が来るまでの間、空いているベッドでBを休ませることにした。

 夕方近く、Bの母親が病院に駆けつけて来た。

 Bに付き添っていたA課長は、母親に事情を説明し謝罪した。すると母親は、怒りをあらわにした。

「Bちゃんは会社の先輩にいじめられたんですね!許せない!」

「いじめたわけではありません。ただ大きな声で指導したためビックリしたみたいで…」と課長の歯切れは悪かった。

「とにかく、Bちゃんは自宅へ連れて帰りますから!」

 Bは母親に付き添われ自宅へ戻っていった。