第3章
11
ざわついていた室内から一瞬に音が消え、緊張が支配した。
3人の大臣は場違いの場所にやってきたような戸惑った顔で、若手官僚たちを見ている。
「いったい、何ごとなの」
優美子が森嶋に身体を寄せ、低い声で言った。
「僕が知るわけないだろ」
3人の大臣たちは軽く頭を下げると最前列に並んで座った。
「森嶋君、話をしてくれないか」
村津はなんの前置きもなく、森嶋に向かって言った。
部屋中の視線が森嶋に集まっている。
話をするようには言われていたが、このように突然とは思わなかった。まして、3人の大臣が聞きに来るとはまったく意外だった。
遠山が、持ってきた資料を各自に配布するように指示している。明け方、森嶋が村津にメールで送っておいたものだ。
「森嶋君が2年間、ハーバードに留学していたのは知っていると思う。その時に『中央集権の崩壊』と『日本、遷都の歴史』という論文を書いている。今後、きみたちが仕事を進めていくに当たって、有意義なものと思う」
さあ、というように村津が森嶋を促した。
森嶋はホワイトボードの前に立ち、話し始めた。
話は2時間に及んだ。最前列の3人の大臣は時折りメモを取りながら、熱心に聞いていた。
しかし終わり頃になって、財務大臣の携帯電話が鳴り始めた。財務大臣は無言のまま携帯電話を閉じると、2人の大臣と官僚たちに頭を下げると部屋を出て行った。
話の後、1時間ほどの質疑応答があった。森嶋にとっては、すでに何回も繰り返してきたものだった。