私たちの仕事や生活の中にある膨大な量の物的資産や、経験と勘に頼って行われてきたアナログプロセスが、さまざまな領域でデータ化され始めている。これらのリアルデータはビジネスや社会をどのように変えていくのか。企業や個人はどう対処すればよいのか。東京大学・森川博之教授の最新刊『データ・ドリブン・エコノミー』(ダイヤモンド社)より内容の一部を公開する。
デジタル化の進展が「事業立地」を広げる
下図は、名目国内生産額の産業別構成比を表したものである。このうち、情報通信産業は94.4兆円、全体に占める割合は9.6%だ。これまでのITビジネスは、この9.6%のところだけで仕事をしていた。しかし、これからさまざまな産業でリアルデータが取得されるようになっていくと、残りの90.4%もすべて対象となる。市場規模が現在の10倍にも膨れ上がるということだ。
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そういう意味では、すべての産業にICTが入り込み、それぞれの事業領域で自らのビジネスの再定義が必要になる。企業はどう変わっていけばいいのか。現時点で明確な答えは出ていないが、有力なのは「モノのサービス化」である。
デジタル化の進展で、これまでの事業立地が滲み出し、じわじわと広がっていくようなイメージになる。事業立地とは「誰に何を売るか」という各企業のポジショニングを指す。事業立地が広がるということは、いまいる事業立地から別の事業立地にも進出せざるを得ないということだ。したがって、その事業立地で戦うライバルは、いままでとはまったく異なるプレイヤーになる可能性がある。
そうなると、これまではある程度予測できたライバルとの戦い方が通用しなくなり、まったく別の戦い方を強いられる。そもそも、誰がライバルになるかさえわからない、そんな世界になる。