私たちの仕事や生活の中にある膨大な量の物的資産や、経験と勘に頼って行われてきたアナログプロセスが、さまざまな領域でデータ化され始めている。これらのリアルデータはビジネスや社会をどのように変えていくのか。企業や個人はどう対処すればよいのか。東京大学・森川博之教授の最新刊『データ・ドリブン・エコノミー』(ダイヤモンド社)より内容の一部を公開する。
ウェブからリアルへの主役交代
グーグル、アマゾン、フェイスブックは、これまでユーザーがパソコンやスマホに打ち込んだ情報やインターネット上に存在するコンテンツをデータとして集めてきた。これらがウェブデータだ。
これに対して、これからはリアルデータが主役になる。センサや無線通信技術を使って、いままで取れなかった現場のデータが取れるようになったためである。リアルな世界、私たちが実際に生活したり働いたりするフィジカル(物理的)な世界から上がってくるデータだ。仮想的なインターネット上の世界とは無縁なところで発生するデータといえる。
リアル店舗のPOS(販売時点情報管理)データは、現場で顧客が実際に購買した商品のデータであり、リアルデータだ。しかし、POSデータだけからは、顧客がある商品を手に取り、迷った末に棚に戻した、迷った末に買い物カゴに入れたというプロセスまではわからない。
これに対して、売り場の様子をビデオカメラで撮影し分析すれば、顧客の購買までのプロセスをデータ化することができる。従業員の動きをデータ化すれば、従業員の配置と売り上げの関係などを見える化することができる。