モノやお金に振り回されず
精神的・体験的なものに重きを置く

 2007年から実際にデュアルライフを始めてみて、また毎年ニュージーランドやオーストラリアなど、幸福度ランキング上位の国々で生活をする中で、強く感じたこと。それは、古い価値観のままでライフスタイルをつくっていくと、幸せではなくなってしまうのではないかということでした。

 ハワイやニュージーランド、オーストラリアは、シンプルな暮らしをしているけれど幸せそう。しかし、モノは豊富にあるはずの日本がハッピーではない……。違う環境の場所を行ったり来たりすることで、その違いが浮き彫りになったのです。

 そもそも私には、モノをたくさん欲しいとか、いい車に乗りたいといった欲求は、もともとあまりありません。デュアルライフを始めた当時は、違和感を覚えているのは自分だけなのではないか、またハワイの価値観だけが別のところにあるのではないかと思っていました。しかし、そうではなかったのです。

 その思いを決定的なものにしたのが、2008年夏にアメリカで起こったサブプライムローン問題でした。アメリカではここ数十年にわたって、住宅のサイズ(スペース)が10年ごとに20%ずつ拡大してきたのだそうです(『スペンド・シフト』ジョン・ガーズマ+マイケル・ダントニオ著 有賀裕子訳/プレジデント社)。

 そして、そこに収まるモノを買うようになった結果、家具や家電製品や衣類、アクセサリーやおもちゃなどが増え、車もどんどん大きくなっていきました。

 しかし、それはローン(借り入れ)によってつくられた幸せでした。サブプライムローンが破綻してストーリーが崩れてしまうと、なくなってしまったり、足かせとなってしまうものばかり。見た目こそ裕福そうですが、実は中身はカツカツで、まったくハッピーではないことが明らかになったのです。

 これは、今の収入がずっと続いていく、自分が持っている資産が値上がりするという想定のもとで、ライフスタイルをつくってしまったことが原因でしょう。

 一方、ハワイやニュージーランド、オーストラリアには、モノが少なく暮らし自体はシンプルですが、豊かな自然や旅をはじめとしたライフスタイルがありました。モノやお金に振り回されるのではなく、精神的・体験的なものに重きを置く。見た目は質素でも、そのほうが実は豊かなのだ。私はそう確信するに至ったのです。