海外で原発をつくれなくなった以上は、原発事業は日本をベースにやるしかない。そんな原発メーカー側の思いを代表したものだ。

 東芝は米国で手がけた原発の建設費が想定を大きく超え、そのせいで深刻な経営難に陥った。フランスのアレバも、フィンランドなどで着工した原発で巨額の損失を抱え、フランス政府の資金支援を仰いでいる。

 しかし、日本メーカーは「日本で建設すれば、同じことは起こらない」と口をそろえる。

 海外で建設費が高騰するのは、現地の建設会社を使いこなせず、工期が大幅に遅れる傾向があるからだが、電力会社と原発メーカーとゼネコンが緊密に連携して建設を進める日本ではそうしたリスクは少ないという。

「原発輸出」の失敗を
認めない政府にいら立ち

 ただ、そうだとしても、原発メーカーはそれほど焦る必要はないはずだ。

 原発事業は、新設の需要がないとはいえ、国内で安全規制の強化を受けた改良工事の受注があり、当面は安定した収益が見込めるからだ。

 関係者は「むしろ中西氏のいら立ちは政府に対して向けられたものではないのか」と話す。

 日立や三菱重工の原発輸出の相次ぐ頓挫にもかかわらず、菅義偉官房長官は「日本の原子力技術に対する期待の声は各国から寄せられている」と、原発輸出が総崩れになったことを認めていない。

 安倍政権は、原発輸出を成長戦略(経済成長を実現するための政策集)の目玉の1つと位置づけてきた。

 トルコへの原発輸出は、安倍首相がトルコ訪問の際、自らトップ外交で話をつけたものだ。

 福島事故以来、原発再稼働は進まず、使用済み燃料からプルトニウムを取り出し原発で使う核燃料サイクル政策も実質、破綻しているなかで、原発輸出は唯一、前向きな可能性が見いださせそうなプロジェクトだった。

 それだけに政府も簡単には「失敗」を認めるわけにはいかない。

“国内回帰”を志向しながら、メーカー側が原発輸出からの「撤退」を明言しないのは、こうした政府の事情を考えてのことだ。