市場の利下げ期待が根強い
「3つの背景」とは
米国ではFRB(米連邦準備理事会)が年内にも利下げを行うとの期待が根強く残っている。FF金利先物価格の動向などからみると、市場が織り込む年内の“利下げ確率”は3月下旬にかけて高まる一方となったが、中国の経済指標が持ち直し(3月PMI製造業景気指数の50超え)、3月米雇用統計が良好な結果となったことなどを受けて、やや低下している。それでも、市場は年内に50%以上の確率で0.25%の利下げが行われるとみているようだ。
3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)時に公開されたFRBメンバーによる金利見通しによれば、年内の利下げを予想したメンバーはゼロだった。それにもかかわらず市場の利下げ期待が根強い背景としては、以下のようなことが考えられよう。
第1に、景気減速懸念があることだ。昨年10-12月期の米実質GDP成長率は前期比年率+2.2%と潜在成長率を上回ってはいるものの、2四半期連続で伸びは鈍化した。個人消費が主導する形での景気拡大は続いているものの、消費を押し上げている要因の1つである減税による押し上げ効果は、今後減衰していくと予想されている。
世界的に景気の勢いが衰えていること、利上げによって金利水準が引き上げられた結果、景気に与える刺激効果がなくなっていること(金利が中立ゾーンに入ったこと)、戦後最長の景気拡大記録更新が目前となり(今年6月で景気拡大期間は121ヵ月となり過去最長記録を更新する)伸び代が少なくなっていると考えられることなども、先行きの景気減速懸念を抱かせる要素となっている。
第2に、物価が落ち着いていることだ。一時期3%近くまで高まった消費者物価は、足元で前年同月比+1.5%へと伸びが鈍化している。主因は、原油価格の下落によるエネルギー価価の下落だ。FRBが政策目標としている個人消費デフレーターでみても、全体の伸びは直近1月で同+1.4%、エネルギーと食料品を除いたコアベースで同+1.8%にとどまっている。トランプ米大統領はたびたびFRBの利下げを促す発言をしているが、その背景にも物価の落ち着きがある。