マンション羅針盤 管理&売買Photo:PIXTA

2026年1月、マンションの共有部の漏水は誰の責任なのかを巡る裁判の最高裁判決が二つ出された。一つは管理組合に責任を帰するとした現場の慣行に沿った判決となったが、実は二つ目の築古マンションに対しての判決が今後のマンション管理に重要な影響を与えそうだ。これからマンションを購入する人にも、現在すでに所有・居住している人にも、全てに影響が出そうなこの判決、いったいどんなことが起こるのか、そして対策はどうすべきか。連載『マンション羅針盤』の第20回では、今後のマンション管理には影響が大きい最高裁判決をマンション管理士が詳しく解説する。(コネクトコンサルティング 代表取締役・税理士法人アイム会計事務所 社員税理士 大浦智志)

共用部漏水最高裁裁判で明らかにされた
老朽化マンションが抱えるリスク

 2026年1月22日、全国のマンション管理組合や区分所有者にとって極めて重要な最高裁判所判決が下されました。建物の共用部分である配管や外壁などの不具合に起因する漏水事故について、その損害賠償責任は、「特段の事情がない限り区分所有者の団体(管理組合)」にあるとする初判断が、裁判官5人の全員一致で示されたのです。

 特に築古マンションの管理においては、しばしば漏水は問題になります。この判決は一部のメディアでは「管理組合に重い責任」とセンセーショナルに報じられる向きもあります。しかし、マンション管理士および税理士といった実務家の視点からいえば、この判決によって明日から良識ある管理組合の日常的な実務が劇的に変わるというわけではありません。これまでも多くの組合では、共用部からの漏水に対して組合主導で事後対応を行ってきたからです。司法はあくまで、現場の慣行を法理として追認したにすぎません。

 本質的な点はそこではありません。損害賠償責任の法理が最高裁レベルで明確化されたことで、老朽化マンションが抱える財務リスクと「ガバナンスのバグ」が、これまでになく鮮明に可視化されたことにあるのです。それは何なのか。最新報道で明らかになった生々しい実務の壁を交えながら、巨額の偶発債務リスクやコンプライアンスの落とし穴、そして今後のマンション資産防衛の鉄則について、詳しく解説していきましょう。

 「何かあったら組合の口座にある何千万円(マンションによっては数億円)もの修繕積立金から支払えばいいのでは」と思っている所有者もいるかもしれません。しかし、実は、ここにはワナが存在します。場合によっては、全住戸から数十万円から数百万円の一時金を急きょ強制徴収せざるを得なくなったり、個人の財産が無限責任のように脅かされる可能性すらあるのです。今回の判決を正しく理解することは、不動産投資家にも実需でマンションを購入する人にも両方に必要です。

 マンション管理はいわば「数十億円の資産を運用する企業経営」のようなものです。その経営の在り方もこの判決は左右することになるかもしれません。次ページから見ていきましょう。