部下とのコミュニケーションにも「定性・定量分析」を使いこなしましょう。フィーリングで評価し、ロジックは破綻...部下から嫌われる残念上司にならないために、定性分析・定量分析の手法を積極的に活用していくべきだ Photo:PIXTA

ビジネスシーンには、数字や論理性に乏しい管理職は意外に多いが、知らず知らずのうちに自分がそんな残念な上司になってしまっている可能性もある。『ビジネスで使いこなす「定量・定性分析」大全』(日本実業出版社)の著者・中村力氏に、ビジネスパーソンが心がけるべき部下へのコミュニケーション術について聞いた。(清談社 岡田光雄)

フィーリングで評価は論外!
上司が身につけるべき論理的思考術

 管理職には定量・定性的思考が求められる。と言われても、わからない人にはサッパリだろう。定量的思考とは「数字に基づいた」思考法で、定性的思考とは「論理性、因果性、創造性などに基づいた」思考法のこと。端的にいえば、前者は「数字」、後者は「数字以外のデータや発想」を重視した考えた方だ。

 さて、上司のマネジメントで最悪なのが、気分や感覚で物事を決定することだ。中村氏は、定量的思考(数字)をベースにした意思決定の重要性を語る。

「管理職の中には、部下の仕事の割り振りなどを直感で決めていたり、好き嫌いで人事評価をしている人もいるようですが、それはフェアではありません。上司が部下を評価する際には、たとえば5段階評価のうちA君は『営業力5、事務力3、企画力4』、一方のB君は『営業力3、事務力5、企画力4』のように、定量的な評価軸を作成して比較し、より公平に評価を下すことが重要です」(中村氏、以下同)

 最終的な意思決定は数字だけで行うことはないにせよ、こと人事評価などにあたっては、数字的データは必須だ。

 こうした定量的思考を踏まえた上で、次に、かける言葉や伝え方など定性的思考にフォーカスして話を進めていこう。

「まずは上司が何をどの順番で伝えるかなど、取捨選択や優先順位の決定が必要になってきます。たとえば、上司の多くは部下の営業結果など“埋没費用”(すでに回収できない資金)に対して叱責する場面が多いと思います。しかし、埋没費用は回収不能なお金です。そう考えると、上司が部下に対して意識させるべきは“機会費用”に関する議論、つまり今後の選択肢で、一体どれが利益を最大化できるか、ということではないでしょうか」

 中村氏によれば、すでに返ってこない埋没費用は積極的に忘れ、これからの意思決定に専念した方が合理的なのだ。