視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。
親は子どもに「自転車の乗り方」をどう教えるべきか
もう十数年前になるが、私の娘が初めて自転車に乗れた日のことを今でもよく覚えている。
当時、娘は小学校に上がる前。怖がりな彼女は、なかなか補助輪なしの運転ができなかった。
ある日曜日に意を決し、娘と一緒にサイクリングコースがある大きな公園に出かけた。そこで補助輪のついていない子ども用自転車をレンタルして、チャレンジさせることにしたのだ。
ところが、いざ練習を始めようとすると、娘は「やっぱり怖い、できない」と泣き出してしまう。
ここで諦めてはいけない。「お父さんが荷台を支えて一緒に走るから」と、繰り返し説得する。すると、ようやく泣き止み、練習を始める気になってくれた。
それでもことはすんなりと運ばない。私が荷台を両手で支えて「これなら転ばないから、ペダルを踏んでごらん」と言っても、娘のペダルを踏む足に力が入らず、なかなか前に進まない。
そこで「もっと思い切り踏まなきゃ。絶対にできるから」と少し厳しめに言ってみた。すると、前進できるだけの強さでペダルを踏めるようになった。
荷台を支えてあげての練習を数回繰り返すうちに、走りが安定してきた。ある程度スピードも出ている。
そろそろ自分が一緒に走るのがつらくなってきた。ちょうどよい頃合いだ。「そろそろ手を離すよ」と宣言し、荷台を支えるのをやめる。するとどうだろう。私を残してスーッと1人で自転車を走らせていくではないか。