しばらく続く
地道なカイゼンによる“雑巾絞り”

「福島への責任を果たすために東電が存続を許されたということは今後も不変である」。新々総特の冒頭には、そう記されている。

 福島への責任とは、福島第一原発の廃炉、被災者への賠償、福島の復興の完遂である。東電HDは福島への責任という“十字架”を背負い、その責任を果たすまで稼ぎ続けなければならない。

 稼ぐ力を高めるために期待されているのが、新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働だ。すでに6、7号機は原子力規制委員会の安全審査をクリアし、安全対策工事を進めた後に立地自治体の再稼働の同意を得る運びになっている。

 装置産業である電力業界では、発電効率が良く、燃料コストを抑えられる競争力の高い発電所を稼働させると収益力が強くなる。東電HDの試算では、原発が1基稼働すれば、年間最大で900億円のコスト削減につながる。

 だからこそ、福島第一原発事故を経てもなお、東電HDは原発の再稼働にこだわるといえる。

 震災前は原子力設備利用率と、どれだけ資産を効率よく活用して稼いだかを示す指標であるROA(総資産利益率)は相関関係にあることが読み取れる。震災以降は不動産や関連会社などを売却して資産を圧縮したため、原子力設備利用率とROAの相関関係は特殊な状況になっている(図4)。

 とはいえ、東電HDが原発の再稼働を始めれば、よりROAが改善するはずだ。震災後に4基が再稼働にこぎ着けた業界2位の関西電力は、東電HDよりROAが1.38ポイント上回る。これは、再稼働が影響しているからだ。

 東電HDでは現状、原発は一基も動いていない。柏崎刈羽原発の立地自治体である新潟県、柏崎市は再稼働に慎重な姿勢を示しており、業界関係者の間でも「あと2~3年は再稼働しないだろう」との見方が占める。再稼働による早期の利益貢献は厳しい状況だ。

 そんな中で利益を出すために最も効果を挙げているのは、東電グループ全体でのコスト削減だ。15年からトヨタ自動車のカイゼン方式を取り入れ、18年度は1兆円近い“雑巾絞り”に成功する見込み。原発の再稼働が見通せない状況では、地道な雑巾絞りを続けざるを得ないだろう。