2011年3月11日の東日本大震災で起きた福島原発事故の直後、私たちがニュースや政府の情報から得られる放射線情報には限りがあった。そんな中、自ら計測をしようと立ち上がった市民ボランティアグループがある。それが、日本在住のオランダ人ピーテル・フランケンさんらが共同創設者となって立ち上げた「セーフキャスト」だ。彼らは自分たちで計測するにとどまらず、計器を貸し出すことで計測データを集め、オンライン上で可視化できる仕組みを作りあげた。震災から8年たった今、その活動は海外にも広がっている。(ライター 中谷光希)
正確な放射線量は
自分で測らないとわからない
「20年以上日本に住んでいて、あんなに揺れたことはなかった」
2011年3月11日に起きた地震をピーテル・フランケンさんは、こう振り返る。
フランケンさんは、オランダの大学を卒業した直後の1990年から日本に住んでおり、今では日本に家族も親戚もいる。震災当初は、妻の実家の石巻の被害の状況と、小学生の娘への福島原発事故の影響が心配だった。都心に住んでいたが、自宅の線量を知りたくても、肝心の放射線計測器(ガイガーカウンター)はどこにもない。量販店ではすでに売り切れ、粗悪品がネットオークションで、10万円以上で取引されているような状態だった。
フランケンさんは友人の伊藤穣一さん(現、MITメディアラボ所長でセーフキャストの共同創設者の一人)に相談した。伊藤さんの友人で、アメリカでガイガーカウンターを取り扱っているメドコムインターナショナル社、ダン・サイス氏の協力を得て、ガイガーカウンターを数十台、送ってもらった。そのガイガーカウンターを貸し出す形で、自分たちの家の周りから計測を始めたが、その数値はニュースで知る数値よりも高いことがわかった。
「やっぱり自分たちで測ってみないと、正確な数値はわからない。それに同じ地域でも、場所や、材質によって、数値が大きく異なることが、自分たちで測ってみてわかったのです」(フランケンさん)