「つみたてNISA」という制度をご存じですか? 税金が得する口座を開いて、そこで投資信託を積み立てで購入する制度です。
銀行は儲からないので積極的に教えてはくれませんが、税金が得するほか、手数料の安い投資信託が購入できますし、金融機関によっては100円から始めることができるので手軽です。
そんな良い商品を広めるべく、セゾン投信の中野晴啓社長が上梓した『つみたてNISAはこの8本から選びなさい』。この連載はこちらの本から、エッセンスを抜き出して連載いたします。

積立投資と一括投資、どちらが得なのか

第1回はこちら

前回は、つみたてNISAでの長期投資が重要なのかをご説明しました。

この長期投資の有効性が理解できたら、次は積立投資です。積立投資の有効性については諸説紛々です。

私は積立投資というものは、特に個人投資家には非常に有効だと考えています。しかし、積立投資はダメだという人たちの意見を聞くと、次のようなことを必ず言います。「株式でも投資信託でも、将来、値上がりすると思うから投資するのであって、そうである以上、積立投資よりも一括投資の方が有利ですよ」。

さて、皆さんはどう考えますか。確かに一理あります。

ある投資対象の値段が順調に値上がりしていく場合、それぞれの値段で積立投資するよりも、最初の安いときに一括で投資した方が、トータルで見たリターンは高まります。それは当然です。恐らく投資をしたことのない人でも、何となく分かるでしょう。 例えば、1口あたりの値段が100円から140円まで10円刻みで積み立てたものを全部、150円の時に利益確定で解約したとします。5回の積立投資で得られた利益は約134円です。

これに対して、5回の積み立てと同額の500円を原資にして、100円の時にまとめて買ったとすると、購入した口数は5口です。ということは、1口あたり150円で売却できれば、売却時の総額は750円ですから、750円-500円=250円になります。このように、ずっと株価が上がるなら積立投資よりも一括投資の方が、リターンが高まるケースもあります。

ただ、それは一直線な右肩上がりで値上がりした場合の話です。株価でも為替レートでもそうですが、一直線に値上がりするケースは皆無です。株価の値動きを追うと分かりますが、常に上昇、下落を繰り返しながら、徐々に株価は下値を切り上げるようにして、上昇トレンドが形成されていきます。

だからこそ、積立投資を継続する意味があるのです。ドンと、大きく下がったところで大量に買う自信があれば、誰でも一括投資をします。でも、実際にはそんなところで買える人はほとんどいません。だから積立投資によって、買い付けるタイミングを分散させるのです。

積立投資と一括投資

積立投資は毎月買いますから、場合によっては、値段が高いところで買わざるを得ない時もありますが、定期的に同じ金額で同じものを積立投資していけば、値段が高い時は買う量を抑えられ、値段が安い時は多くの量を買うことが出来ます。

もちろん、下げ続けた結果、無価値になってしまったら、一括投資も積立投資も関係なく、等しく損失を被りますが、値段が上下動を繰り返しているならば、値段が安くなったところで通常よりも多くの量を仕込むことが出来る積立投資は、有効だと考えられます。

(続く)

中野晴啓(なかのはるひろ)
セゾン投信代表取締役社長、1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社2006年セゾン投信を設立。07年4月より現職。積み立てで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言、それに合った2本の投資信託を運用し、価値ある投資信託に送られる「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を5年連続受賞、口座開設数約14万人、預かり資産約2400億円に。公益財団法人セゾン文化財団理事、一般社団法人投資信託協会理事。
著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』『お金のウソ』(ダイヤモンド社)、『預金バカ』(講談社)ほか多数。