一方、無償化は全国の約300万人に恩恵があるとされる。自民党の政調会がいつも通りに政策を立案すれば、無償化こそ集票のための新たな地方への「補助金」であり、それが選択されるのは自然なことである。

 ここに、自民党政治の本質的な問題が隠されている。だが、左派野党がこれに気づき、追及することはできない。「何でも反対」の思考停止では、問題の本質を突き詰めることはできない。その上、左派野党もまた、地方への補助金を獲得することで生き残ってきた。自民党と左派野党は、55年体制以来「コインの裏表」のような関係だ。自民党政治の本質的な問題は、左派野党の本質的な問題でもあるので、目を背けることしかできないのだ。

 自民党政治の本質的な問題を突けるのは、現状では維新の会だけなのだ。それを示す好例が、前回取り上げた大阪府・市の行革で新たな財源を生み出し、待機児童問題と無償化を同時に達成したことだ。

 これは、都市部の問題である待機児童問題は、中央集権の政党ではなく、地方に基盤を持つ政党が主導して解決したほうがいいということを示している。中央集権の限界と、地方への分権と財政移転の必要性という、維新の会の訴えの正しさを強く訴えることができるいい事例なのである。

子育て支援問題があぶり出す
「一極集中」という長期的課題

 自民党の「待機児童問題よりも無償化」という政策は、もっと中長期的な日本の課題も象徴的に示しているように思う。待機児童問題の解決は、まずは財政を都市部に投入し、保育所を増やし、保育士を増やすことが必要だが、中長期的には都市部への人口集中を解決しなければならないということだ。

 つまり、大阪や東京、名古屋など大都市圏が主導して問題解決をする段階の次には、日本全国の地域が多くの人を受け入れて活性化する必要がある。道州制の導入などによる、地方主権の実現が必要だということだ。

 この連載では、これからの時代は、地方が東京の顔色をうかがうばかりではなく、地方が直接成長する海外の地域と結びつくべきだと主張した(第204回)。例えば、北海道はサハリンやシベリアの石油・天然ガスで儲ければいいし、新潟や金沢も加わって環日本海経済圏を作ればいい。もし将来、北朝鮮が民主化・自由化されるならば、北朝鮮も加わって大きな経済圏になるかもしれない。

 大阪や九州、四国は、シンガポール、香港、上海などと直接結びつくべきだ。以前、大阪が国際金融市場を持つべきだと主張したことがある(上久保誠人『「橋下徹のしょぼい提案」をスケールのでかい構想に変える秘策がある』)。確かに、荒唐無稽なアイディアのように思われるかもしれない。