3倍のスピードと
5分の1のコストを実現

 日本企業の不利益を是正したい――。ここに商機を見いだして誕生したのがキビットだ。

 当初は、米国などの海外企業から技術ライセンスを買って早期にディスカバリサービスを立ち上げる予定だった。ところが、日本語の処理がうまくいかない。

 そこで自前開発へと方針転換した。開発のスローガンは、「学習量が少なくても精度の高いAIエンジンを作る」。キビットという名前には人の微妙な心の動きを意味する「機微」と情報単位の「ビット」の意味が込められている。

 ではどんな世界が開けるのか。例えば、取引先と交わされたEメールに、どのような文言が含まれるとカルテル制裁の対象になるのか、キビットを使えば効率的に証拠を示すことができる。

 まず、キビットに法に抵触するようなパターン事例を学ばせて「教師データ」を作成。キビットは、人間(弁護士など)以上に、微妙なニュアンスの表現を見分けられるので、その教師データを基に膨大な電子データ(Eメールなど)を分析すると、訴訟の証拠を素早く発見できてしまう。

 従来のように雇った弁護士の知見と勘に頼った方法に比べると、3倍のスピード、5分の1のコストで解析できる。弁護士の作業品質を評価する機能を持ち合わせているのもキビットの強みだ。

 キビットを使ったディスカバリサービスの効果は絶大で、「実際に、巨額の課徴金賦課を免れたケースもある」という。

「1年でイメージ通りのエンジンができた」。キビットの開発こそ滞りなく進んだが、武田の人生が順風満帆だったわけではない。

 武田は、02年から複数のベンチャー企業に、自然言語処理専門のプログラマーとして在籍していた。フロンテオへ入社する前の企業が民事再生法の適用を申請するという憂き目に遭っているのだ。

 特許の情報解析をしてそれを基に有望技術に投資するビジネスモデルだったのだが、「日本に1社しかない良い技術を持つ企業だったが、それをマネタイズする商売は上手ではなかった」。

 武田は、その倒産企業のエンジニア5、6人をフロンテオへ引き連れていった。実は、前職時代の失敗をリベンジしようとして開発されたのがキビットなのだ。

「おまえら、悔しかっただろう。せっかく良いものを作っても社会に貢献できないと意味がない。絶対に、成功させよう」。武田の掛け声の下、新生フロンテオの技術陣が一丸となった瞬間だった。