中国デジタルイメージ知的財産権の保護に対して腰の重い中国政府が、「視覚中国事件」に迅速に対応した背景には何があるのか。(写真はイメージです) Photo:PIXTA

中国の知的財産権問題に
火をつけた「視覚中国事件」

「視覚中国」が地雷を踏んだ――。

 これは約2週間前、私があるニュースを読んだときの素直な感想だ。

 視覚中国(Visual China Group)とは、中国のあるビジュアルコンテンツサービスを提供する会社だ。わかりやすく言えば、写真などのコンテンツの使用権を販売するビジネスを行う専門会社で、日本でもよく見られる業態である。すでに上場していることからも、経営状況は悪くないようだ。順風満帆にやってきたかのように見えるこの会社は、4月中旬、突然「自爆」したかのような事件を巻き起こした。

 事件の導火線は、1枚の写真だった。

 日本、アメリカ、ヨーロッパ各国の約200人の天文科学者からなる研究チームは、共同で銀河にある巨大なブラックホールの姿を捉えることに成功し、4月10日、その写真を無料で公開した。この史上初の快挙に、世界各国のメディアが注目し、写真を大きく取り上げた。

 翌日の11日午前、視覚中国はウェブサイト上で、このブラックホールの写真を自社のロゴ入りで公開した。しかも、いかにも同社がその写真の代理販売権を持っているかのように、同写真を商業目的で利用する場合、「同社の顧客部門責任者に連絡してください」といった内容の注意書きを添えた。

 同写真を利用しようと考えるネットユーザーに、「使用料が発生する」という認識を持たせる作戦だ。同社のサイトでは、中国国旗や国章の写真など「本来無料で使用できる写真素材にも使用価格が表示されている」といった指摘がなされた。

 そこで、中国政府に近い共産主義青年団中央のSNS『微博』などが疑問を呈し、「国旗、国章の著作権も貴社のものなのか」と厳しく問い質した。中国共産党機関紙『人民日報』と国営新華社通信も、無料で使用できるはずの写真コンテンツをその著作権所有者の許可を得ずに有料で販売している視覚中国のビジネスモデルについて、SNSを通じ相次ぎ批判した。