ほしい生徒を自ら選び、アプローチする――ポイント[1]入口戦略

 ミネルバ大学は、図1で見た通り、情報技術に投資することで、ほしい学生にアプローチし([1]入口)、その能力を最大限伸ばし([2]中の活動)、卒業後も活躍できるようフォローしている([3]出口)。では、それぞれの戦略について、順に詳しく説明しよう。

 まず、ミネルバ大学はどのようにして自分たちが望む学生にアプローチできたのだろうか。そこにはソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)を駆使した発信や、オンライン上でさまざまな情報を取得し、プロモーションに活かす仕組みが用いられている。ミネルバ大学はSNSだけで、フェイスブック、インスタグラム、ツイッター、リンクトイン、ウェイボー(非公式)を使い、オウンドメディアとしてメディアムとユーチューブ、自社ウェブサイトを利用している。こうしたオンラインメディアを適切に使い分け、自社ウェブサイトへの流入経路を確認しながら、世界中のミネルバ大学に興味を持った学生・企業・行政に最適化されたプロモーションを展開しているのだ。

 また、入学審査のシステムは全プロセスを自校で完結できるのだが、これも審査過程を合理化するためだ。そして入試にTOEFLやSATのスコアも推薦状も不要としているのは、こうした情報がなくても自分たちに適した学生を選択できる設問と、学生が入力した直後から審査を開始できる柔軟性を担保するためである。2万人以上が受験する大学ではあるが数人の専任の入学審査官が効果的に受験生を振り分け、希望する学生には条件付きで3週間以内に合否判定を連絡し、合否のボーダーラインにいる学生には、締切日が過ぎても、個別に連絡を取り、提出した内容の修正を許可することまでする。ミネルバ大学の合格率1.2%ではあるが、合格できる可能性のある学生には、既存の大学よりも多くの時間をかけて、マッチングを図っている。厳しい審査ではあるものの、紙の一発試験では到底測れない学生個々の可能性を見ることができるのだ。