子どもの多い通学路にもガードレールがないなど、日本は歩行者軽視の国と言えます。歩道の広さを見直したり、ガードレールを整備する、さらには子どもの多い通学路などは、時間帯によって進入制限や速度制限を設けるなどの施策を実行しない限り、痛ましい事故は減らないだろう(写真はイメージです) Photo:PIXTA

5月8日、滋賀県大津市でまたもや保育園児の列にクルマが突っ込み、園児2人が死亡するという痛ましい事故が起きた。ただ歩道を歩いているだけの人が次々にクルマにはねられるという現実の裏には、歩行者軽視の交通政策がある。(ノンフィクションライター 窪田順生)

ドライバー厳罰化では
痛ましい事故は減らない

 クルマの安全技術をもっと進化させるべきだ。いや、それよりもまずは危険運転の厳罰化と、高齢者など危なっかしいドライバーの規制も本格的に検討すべきではないか――。

 なんて感じで、呑気な議論をしている間に、またしてもクルマによって、何の罪もない人々の命が奪われてしまった。

 昨日、滋賀県大津市で、散歩中に交差点で信号待ちをしていた保育園児たちの列に、普通乗用車と衝突した軽自動車が突っ込んで、2人の園児が亡くなり、9人が重傷を負ってしまったのである。

 少し前に、87歳の元通産官僚の「踏み間違い暴走」によって31歳の母と3歳の娘が亡くなって、日本中が自動車事故の恐ろしさを思い知ったばかりだろ、とドライバーに激しい怒りを抱く方も多いかもしれない。

 ただ、このような事故を起こしたドライバーを社会でボコボコに叩いて厳罰に処したところで、しばらくしたら同じように子どもを巻き込むような事故は起きるだろう。この何十年、何度も繰り返されてきたことである。

「だからこそ、官民が一体となってクルマの安全技術を進化させなくてはいけないのだ!」という勇ましいかけ声が聞こえてきそうだが、その素晴らしい技術が日本中の車に搭載されるまで、あと一体どれだけこのような犠牲者を出さなくてはいけないのかという問題がある。

 安全技術を確立するのは当然としても、まずは1人でも犠牲者を減らすため、長らく放ったらかしにしている問題に手をつけるべきではないか。

 その問題とは何かというと、「歩行者軽視」だ。

 ご存じの方もいらっしゃるかもしれないが、実は日本の歩行者は、他の先進国より自動車事故の犠牲になりやすいという事実がある。