開発で重要なのは
経営の選択肢を増やすこと

 途中、挫折もあった。12年ごろの重希土類の価格が落ち着いた時期に、この開発の必要性を問う声が社内にあったのだ。だが、貝塚は「世界で電動化が加速しているのは事実。開発で重要なのは、経営の選択肢を増やしておくことだ。近視眼的なコストだけではなく、環境負荷や資源偏在を考えれば重希土類をフリーにすることがリスク軽減になる」と言い切る。

 昨年には、1モーター(小出力)のフリードに続き、2モーター(大出力)のHV「インサイト」にも新モーターを搭載。矢継ぎ早の展開に、競合メーカーのエンジニアも「先を越されたと思った」と打ち明ける。

「将来的には、自動車で培ったモーター技術を家電などで社会に広く普及させたい」。自動車メーカーの枠にとらわれない貝塚の自由な発想が、新たなシーズを生むきっかけになるかもしれない。(敬称略)

(ダイヤモンド編集部 浅島亮子)

【開発メモ】重希土類フリー駆動モーター

 ハイブリッド車(HV)のフリードやインサイトに搭載された重希土類フリー(使用していない)駆動モーター。写真はモーター回転子の「ローター」部分の拡大。ローターにV字形に組み込まれている永久磁石の配置を変えたり、磁石の周りに小穴を開けるなどローターの形状を変えたりすることで、磁石の耐熱性を高めて磁力の低下を防いでいる。

重希土類フリー駆動モーターPhoto by F.A.