当然、持ち株会社にぶら下がる事業会社の社員一人ひとりの生産性向上がカギになるが、同時に“余力”を生み出す知恵が必要になってくる。

 そこで、2018年9月、改革推進部内に「BPR推進室」が新設された。BPRとはBusiness Process Re-engineering、つまり、企業活動や業務の流れを分析し、最適化する形で業務改善を行うこと取り組みのことだ。

 サッポロHD傘下企業には、サッポロビールやポッカサッポロフード&ビバレッジ、サッポロライオンなど13社あるが、各社が独自で持っていたオペレーションや物流、ITの機能などを集約し、スリム化する。2021年を目処に、あまたある業務の廃止・簡素化を決める一方で、類似業務の標準化やテクノロジーの力を借りて自動化も行う。「業務量の絶対量の削減」と「社員の業務フローの改善」を一気に進めることで、最終的にはグループ全体に利益をもたらすことを目指している。

 ポイントは、これらの一連の業務の集約作業の対象が、事業部だけではないということだ。BPR推進室は、聖域ともいえる「人事部」も対象にしてしまった。

 持ち株会社体制をとる企業にありがちな人事スタイルといえば、持ち株会社に加え事業会社ごとに人事部があり、それぞれが独立しており、独自の制度や業務プロセスを持って運用しているというものだ。サッポロもまた例外ではなかった。

 人事部の仕事のうち、グループ内の業務の集約でもっとも効率化ができそうな部分は「給与計算」だ。すでに、働き方改革の一環で、定型業務を代替するために「RPA(Robotic Process Automation/ロボットによる業務の自動化)」の活用を先行して進めていたが、人事業務の改革には給与計算のRPA化を行うことにした。

 しかし、そう簡単にはいかない。グループ13社の給与計算の標準化を行うために実態を調査すると、まず13社それぞれに人事機能が存在し、人事制度や賃金制度、さらには給与締め日、仕事内容、人員構成、なにもかもばらばらで、オペレーションも全く異なっていた。

 それだけバラバラでも大した問題にならなかったのは、各社に散らばっていたベテラン人事社員の技能とスキルのおかげで、グループ間で基準を揃えなくても各社ごとの業務として成り立たせることを可能にしていたからだ。一方で、どんどん仕事が特定の個人に紐付き“属人化”し、ベテラン社員をなかなか異動させられなかったり、新人を入れても教育に時間がかかり一時的なスタッフを雇わなければならなかったりする事態が起きていた。

 しかし、いま社内では派遣社員や有期雇用者の数が減っており、もはやそんな余裕もない。