押されなくても待ち時間短縮!
「チャイム」の意外な効果

 検証実験中には、個室トイレの前に「並んだら押してください」と張り紙をして、「ピンポーン」と鳴るチャイムを置くことにした。「それだけ」の実験である。

トイレ待ちチャイム
実際に設置された「トイレ待ちチャイム」

 ところが、1週間の実験で、結果はすぐに表れた。

 チャイム設置後に定性的なアンケートを取ったところ(約1600人が回答)、男性の68%、女性の62%が「施策効果あり」と回答。体感値だが、ピーク時の平均待ち時間も、男性は実証前の4.6分から2.7分に、女性は3.8分から2.0分にまで縮んだ。そして、男性の73%、女性の60%が「施策継続を希望」と回答するに至った。

 ただ、このフィジビリで総務チームが驚愕したのは、この実験の成果が「実際にチャイムを鳴らしたこと」からもたらされたわけではなかった点だ。

「チームのメンバーに『実際にチャイムボタンを押したか?』と聞くと、誰も押していない。それどころか、『押している人を見たことがない』と言うんです」(佐野室長)

 そう、チャイムのボタンは押されていないのに、個室から早く出る人が増えたのだ。

 なぜそんなことが起こったのか、改めてヒアリングを進めてみると、意外な答えが返ってきた。

「ボタンを押させてしまったら悪い、という気持ちになって早くトイレから出るようになった」

 つまり、はじめに佐野室長が言ったように、「誰もボタンなど押したくないはずだ」と個室トイレの中にいる人が考え、相手のために早く出てくるようになったである。事後のアンケート結果でも、「改善効果あり」と答えた人のうち、「実際にチャイムボタンを押すことで改善した」と答えたのは15%だった一方で、「チャイムを設置したことが抑止効果になった」と答えたのは25%と後者のほうが高かった。