「上客=カモ」向けの営業には重要な情報

 また、例えば、「東証1部上場企業」であることを維持したい上場企業にとって、仮に時価総額で「足切り」が行われるとした場合、その基準が250億円なのか、500億円なのか、1000億円なのかは、ぜひ知りたいと思う重大な問題だ。

 例えば、収益環境の悪化で資金運用に対するニーズが大きく、従って証券会社にとって目下の上客(「上客」には「カモ」というルビを振って読んでください)である地方銀行のような法人客向けの営業にとっては重要で有用な情報だ。

 加えて、仮に東証1部の上場基準が500億円になった場合、時価総額が500億円に少し足りない上場企業に対しては、投資家の印象を改善して株価を上げ、時価総額基準を満たす方策のアドバイスがビジネス上有効だろう。また、時価総額が大きく足りない上場企業の場合には、他の上場企業と経営統合することで500億円を維持できる可能性があり、この経営統合は証券会社にとって大きなビジネスチャンスになり得る。

「東証1部上場基準」の情報は、株価に影響し、従って株式取引上の有利不利に影響し、証券会社のビジネス上の利用価値も大きい。この情報を持つことができてビジネスに利用できる野村證券と、この情報にアクセスできない証券会社とのビジネス上の有利・不利を考えると、情報の価値がよく分かるはずだ。

 自らが持つ情報を、野村グループだけに伝え、他の証券会社には伝えないのだとすると、そこには不公平が生まれる。有識者としては、その状況がまずいことに対して敏感であらねばならなかった。特に証券取引制度を中心に金融の制度全般に関わる第一人者だった大崎氏がこうした点に気付かなかったとは想像しにくい。しかし、結果論かもしれないが、彼には油断があったのだろう。