ビジネスパーソンは、とにかく忙しい!少々カラダに不調があっても、なかなか病院に行けない、誰に相談したらいいかわからない、料金もいくらかかるのか…そう思っている人も多いはず。この連載は、所属している先生がすべてイケメンの「イケメンドクターズ」(NHKの『ごごナマ』でレギュラー出演も!)の先生方が、みなさまのちょっとしたお悩みにお答えします。第2回目は、夜の大問題「いびき」についてです。
妻に「いびきがうるさい」と言われます。いびき防止グッズとして、口に貼るテープや、鼻の内部(鼻腔)を広げるもの、最近ではサプリメントも勧められます。これらは本当に「いびき防止」に効くのでしょうか?(男性・50代)
いびきが原因で夫婦「別寝室」の申し出が…
私は、睡眠・呼吸器内科を専門にしている病院の医師です。先日、いらっしゃった患者さんの中に、こんな方がいました。
ノックというよりは、ドアを叩いている様な音を立てて、荒々しく診察室に入ってきたのは田中一誠さん(仮名)。50代の既婚男性で、ご自身で会社を経営しています。
ネクタイに薄いブルーのジャンパーを着た中肉中背の田中さんは、白髪交じりの髪を整髪料でなでつけており、肌は浅黒くゴルフ焼けしていて、いかにも健康そうです。そんな彼は、明らかに不機嫌そうな顔をしていました。
そして椅子に座ったかと思うと、腕組みをして何も話しません。普段から、たくさんの患者さんと対面している私は、このような患者さんにも慣れっこです。
しばらく黙っていると、ついに、田中さんは自ら口を開きました。
「先生、自分は何も困っていないんだよ」
「何も困っていない方が病院にいらっしゃったのはなぜでしょうか」
「……最近、ウチの嫁がずっとうるさいんだよ。『あなた、一度病院で診てもらった方がいい』ってさ。『いびきが年々うるさくなって、最近は呼吸も止まっているみたい』だって」
田中さんは、経営者として毎日一生懸命働き、接待などでお酒を飲む機会も少なくありません。ですから、いびきくらいかくのが当たりまえ、逆によく眠れている証拠じゃないか、そう考えていたようです。
しかし、重い腰を上げて病院に来たのは、あまりのいびきのうるささに、奥様から「寝室を別にして」と“家庭内別居”の申し出があったから。そして、仲のいいゴルフ仲間の経営者が脳梗塞で倒れたことも大きな理由でした。