弁護士の話を聞くうちに、社長は真紀の話がどこまで本当なのかますます疑わしくなってきた。

 真紀に母親と話したと伝えると、真紀は「退職したい」と申し出てきた。社長は慰留を試みたが、本人は「母が言うのなら仕方ないです」と言うばかり。真相を明らかにできないまま、真紀は退職してしまった。

社長が宇佐美に
退職理由を尋ねる

 真紀の退職後、実家から戻った宇佐美から「実家の父親が亡くなったので、地元に戻ることになった」と退職届が出された。

「真紀のことが原因では?」と思っていた社長は、宇佐美に率直に尋ねた。

「以前、直子さんが、あなたと真紀さんが遊園地で一緒にいる所を目撃したと言っていたけど、退職の本当の理由は真紀さんとのことじゃないの?」

 宇佐美は一瞬驚いたが、「実は、少しの期間だけ真紀と付き合っていました」と認めた。

 真紀から積極的にアプローチされて付き合いだしたが、真紀の家族が自分たちの付き合いに反対しているという理由で、一方的に連絡を拒否されるようになった。自分は何が何だか分からなかったが、職場にプライベートなことを持ち込みたくなかったので、普通に接していた。「今回の退職は真紀とは何の関係もない」と宇佐美は言った。

「実は…直子さんが、以前に真紀さんから『宇佐美さんに駅で待ち伏せされて困っている』と相談を受けていたらしいの」

 社長が言いにくそうに尋ねると、宇佐美はびっくりした表情で否定した。

「そりゃ、付き合い始めの頃は駅で待ち合わせして出勤したりもしましたけど、待ち伏せって…。そんなことしませんよ」

 さらに社長は、真紀が眼帯をして出勤してきたこともあり、DVの件も聞いてみた。

「真紀さんがあなたから暴力を受けていたと言っていたけど、それは本当なの?」

 宇佐美は心底驚いた表情で、憤慨した。

「自分は絶対に女性に暴力なんか振るいませんよ!最近はプライベートで会ってもいないし、ひどい言いがかりです!」