祝 令和 読んで使える! 万葉集の「語彙力」
万葉集ができた時代、まだ「ひらがな」も「カタカナ」もありませんでした。
声に出して詠(よ)んだものが、のちに文字として残されたのです。
奈良時代の名もなき人から天皇までが詠(うた)った、万葉の秀歌。
齋藤孝先生が厳選した楽しい歌と“使える解説”を、ぜひ愉しんでください。

声に出して読んでみたい「万葉の秀歌」

国民総詩人だった頃の
魅力がつまった万葉集

 万葉集は629~759年にかけて編纂(へんさん)された、日本最古の和歌集です。
 全20巻からなり、4516首の歌が収められています。

 日本人は、古代から祭りや労働の際に集団で歌いあう歌謡の文化を持っていました。
 歌は口承(こうしょう)されてきたものの、文字にされずに失われてしまったものも多くあります。

 その後、万葉仮名により歌が文字に残され、私たちは当時の日本人の文化の高さを味わうことができるようになりました。

 万葉集の特徴は、天皇の御歌から庶民による歌、作者不明の歌まで、優れた歌が収められているところにあります。

 当時は、東国から北九州に兵士として赴任する防人(さきもり)がいました。
 そうした防人たち、あるいはその母が悲痛な心情を詠んだ歌も残されています。

 また、宴会などで歌ったり舞ったりする「遊行女婦(うかれめ)」と呼ばれる人たちと、身分の高い人たちがお互いに贈りあった歌も同等に並べられています。

 当時の社会には厳然たる階層や階級があり、社会的な序列も定められていたのですが、歌においては同等の資格を持って取り上げられていました。

 いわば「国民総詩人」として、歌を共通の財産としているところに、万葉集の魅力があるのです。