しばらく前、米商務省がファーウェイと関連する68社を国家安全保障上の懸念から「エンティティリスト」(Entity List)に登録し、米企業がこれらの中国企業と取引するには政府の許可を得なければならなくなった。言い換えれば、ファーウェイとその関連会社に対して鉄拳制裁を行うことにしたのである。

 ちなみに、エンティティリストとは、米国にとって好ましくない貿易相手と判断された外国の個人・団体などを登録して制裁を行う対象者リストのことをいう。1997年2月にエンティティリストが公開されて以来、リストは随時更新されながら現在に至っている。

 ファーウェイなどの中国企業が多数エンティティリスト入りにされたのを見た中国政府は、6月に入ってからその対抗措置として、「信頼できない」外国企業のリスト、つまり中国版エンティティリストを作成すると発表した。その対象は「市場のルールに従わず、契約の精神に反し、非商業目的で中国企業への供給を妨げたり停止したりし、さらに中国企業の正当な権利や利益を著しく損なう外国の企業や団体、個人」としている。

 米国のファーウェイ締め出しに対する対抗措置であることに間違いないが、問題はどの企業をそのリストに登録するのかだ。

大事な市場で痛恨のミス
米中両政府に翻弄される企業たち

 ちょうどそんなとき、フェデックスがファーウェイの小包「配達ミス」事件を起こした。フェデックスは近年来、業績がずっと下降しており、国際業務が思うほどうまくいかず、中国は何があっても手放せない市場だった。だから、調査に踏み切った中国郵政監理部門に対して平身低頭、協力すると公式発言している。

 しかし、中国側から見れば、自国内で有力な宅配業者が次々と誕生し、フェデックスを凌駕しかねないほど急速に成長している。宅配分野ではフェデックスがなくてもそれほど困らない。その意味では、このタイミングで大きなヘマを起こしてしまったフェデックスが、中国版エンティティリストの第1号に選ばれても、まったくおかしくない。フェデックスの株価急落も、それを暗示しているようなものだ。

 米国と中国の間で繰り広げられている貿易戦争は、目下のところ沈静化へ向かうどころか、むしろ応酬の激しさを増している。その意味では、ファーウェイとフェデックスが直面している危機的な問題の解決のカギは、企業の手にあるのではなく、むしろ米中政府の手に握られているといっても過言ではない。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)