蚊帳の外に置かれた監督当局

 そもそも、今回の税務ルール見直しを主導する国税庁課税部審理室は、いわゆるノンキャリア組が取り仕切っている。

 財務省のキャリア組との人事交流はほとんどなく、税務のあるべき姿について追求するような姿勢が強い。

 そのため、今回の節税保険の税務ルール見直しにおいても、国税庁として意思決定するに当たり、政治や足元の選挙を含めて総合的な判断をしようとするキャリア組と、正論を振りかざすノンキャリア組とでは温度差があり、かなり議論があったようだ。

 基本通達の改正案は一見すると返戻率に応じた損金算入の割合が大きく減っており、確かに厳しい内容に思える。

 その一方で、返戻率によっては逓増定期保険など一部で損金算入割合が増える商品もあるのも事実。改正案は一刀両断とはいかず、生保業界に一定の配慮をしてバランスを調整したような跡がうかがえるのだ。

 生保業界としては、そうしたキャリア組とノンキャリア組の温度差に突破口を見いだしており、財務省の大物OBを次々に投入しながら、今まさに国税庁と綱引きを演じている真っただ中にある。

 そうして熱を帯びた攻防が最終局面を迎えようとしている中で、その戦いに全く参加できず傍観させられている中央官庁がある。金融庁だ。

 4月以降、基本通達の改正案を見て、慌てたように医療保険の短期払いについて各社に調査票を配っているところを見ても、蚊帳の外に置かれてしまっていることがよく分かる。

 もちろん金融庁は税務当局ではないので、そもそも攻防に加わる必要はないという指摘はあるかもしれない。

 ただ、生保の経営に大きな影響を及ぼす施策について、監督当局である金融庁のグリップが全く利かず、国税庁との連携もろくにできていないという状況が、果たしてベストプラクティスといえるのかどうか。

 審査の過程で節税保険と十分に知りながら、死亡発生率をはじめ純保険料などの設計に特段無理はないとして、商品を認可してしまった一定の責任は、監督当局として当然あるはずだ。

 金融庁はそうした負い目もあって、昨年から認可事項外の付加保険料の設定に狙いをつけた実態調査に踏み切り、あわよくば売り止めにつなげようとしていた。

 ただ、そうした動きも今年2月の国税庁の登場によって、もはや遠くかすんでしまった。

 今回の節税をめぐる問題は、生保や代理店の経営だけでなく、財務省と国税庁の関係性、政治との距離、金融庁の商品認可制度の在り方など、さまざまな問いをあらためて投げ掛けている。