たとえば、家族が接し方に困るような例では、その家のお父さんがだいぶ以前に亡くなっているのに、残されたお母さん(妻)が、いつまでもお父さんが健在のつもりで生活している、ということがあります。そういうときに家族は、ふだんは聞き流していても、さすがに繰り返されて耐えかねると、「もう、お父さん、2年前に亡くなったでしょ。ここにはいないでしょ」とちょっと言い返したくなります。それは別にかまわないのです。

 ただ、そういわれた認知症の人が中等度くらいまでの場合は、「ああ、そうだったね」とその場では納得するのですが、5分後には、そんな会話があったことを忘れていたりします。そういうわけで、真剣に「もういないんですよ」といって聞かせても、あまり意味はありません。逆に何度もその説明をするうちに家族が腹を立ててしまうことも珍しくないのです。

 認知症による記憶障害が進んだ人は、その場では納得しても、すぐにそういうやり取りがあったことを忘れてしまうので、言い方がきつかったりすると、いわれたときの「不快感」だけが印象として残ってしまうことです。肝心の話の内容はすっかり忘れてしまって、「なにか不愉快なことをいわれた」という感覚だけが残るわけです。それが、実は認知症の「周辺症状(BPSD)」を引き起こす原因になることがあります。つまり、説得したり、軽く叱ったりすることはかまわないのですが、あまり強く叱ると「不快感」が残り、そこから起因する周辺症状につながり得るのです。

 これに関しては、いろいろな接し方をしてみて、「損な接し方」と「賢い接し方」を見極めていくほかないので、そういう接し方、説得のしかたも含めて、認知症への理解、本人がどう受け止めて、どんな感情を抱くのかということへの理解を周囲が深めてほしいと思います。

家族の介護で困ったときはどこに相談すべきか

 実際に家族の介護が必要になったとき、何からどう進めていけばよいのか戸惑うかもしれません。そのような介護・支援に関する疑問や相談があれば、市区町村の担当窓口や「地域包括支援センター」の担当者が相談に乗ってくれます。この地域包括支援センターは、地域住民の保健・福祉・医療の向上など、介護保険に関連することを支援・助言などするために介護保険法で設置されることになっていますから、介護関連で困ったことがあれば、何でも相談できるはずです。

 地域包括支援センターは、その地域の介護、福祉の情報がすべてといっていいほど集まっており、さらに介護・支援の内容でも、デイサービスの施設ごとの状況をいちばん把握しているのがケアマネージャー(介護支援専門員)です。この施設は、認知症でも軽い人たちが多く集まっているとか、あの施設ではいつもマージャンをやる人が集まっている、将棋、囲碁をやっている、カラオケのいい設備がある、といった情報も持っています。