こうした経験から高崎は成功の要因を分析し、独自の理論を構築した。それは、マーケティング(M)、パテント(P)、デザイン(D)、プロモーション(P)の4つがバランスよく機能するとヒットを生むという考え方で、高崎は「MPDP理論」と呼んでいる。

「MPDP理論は、新人タレントを売り出して大スターに育てるプロセスと似ています。当初はただの仮説でしたが、その後のネジザウルスシリーズの商品企画で検証していきました。イノベーションは的を射た少数意見の中にあり、従来の延長線上にはない改善が必要です。日本の中小企業は技術力があり、画期的な製品を生み出してもMPDPが欠けているから売れないのです」と高崎は言う。

 高崎は知的財産権について学ぶために、知的財産管理技能検定という国家試験を受けて、その有用性に気づいたことから社員にも受験させ、現在、正社員の半数の25名が知的財産管理技能士の資格を持っている。

 ネジザウルスGTという武器を得た高崎は、かねてから考えていた海外進出の布石を打ち始めた。2011年には世界的にも権威あるデザイン賞「iFデザイン賞」(拠点ドイツ)に応募し、デザイン賞を受賞した。2017年にもネジザウルスZで再度受賞した。

噛み付くイメージは
恐竜より「吸血鬼」?

ヴァンプライヤーズ「ヴァンプライヤーズ」と商品名を変え、持ち手を赤色にしたら、海外でも大ヒット

 2011年にはアメリカで熱心な代理店と出会うことができ、アメリカ市場にネジザウルスGTを投入した。ところが、思ったほどの反応がない。類似品があるのかもしれないとアメリカの展示会に出かけてみたが、ネジザウルスのような機能を持った工具はなかった。高崎はデザインとプロモーションに問題があるのかもしれないと代理店に相談すると、「名前がピンとこない」と言う。

 日本では恐竜は噛みついて放さないというイメージがあるが、アメリカでは可愛らしいというイメージが強く、マッチしていなかった。代理店は「噛みつくイメージはヴァンパイヤ(吸血鬼)だ」と言い、プライヤーと引っかけて「ヴァンプライヤーズ」というネーミングを提案してくれた。

 高崎は名称を変更し、アメリカで商標登録すると共に、持ち手をコウモリが飛ぶ夕陽と血の色の赤に変えた。恐竜の目をコウモリのマークに変えて、2012年から本格的に販売を始めた。これが功を奏し、年々、売り上げが拡大してきた。