笹宏行新社長体制での適切なガバナンス行使の一例となるか

 一連の損失隠しによる不祥事からの再生途上にあるオリンパスだが、その役員人事が再び波紋を投じている。

 オリンパスは6月4日、本社執行役員で韓国法人の社長でもある方日錫(バンイルソク)氏を解任。6月15日には、「違法な職務行為があったことが社内調査で発覚した」と理由を発表した。

 方氏は2000年の韓国法人設立時から社長を務めており、11年度には売上高約120億円(全社の1.4%)、営業利益20億円弱(同5.3%)の業績を挙げた。また、ミラーレス一眼レフカメラ「PEN」シリーズをヒットさせるなど、オリンパス本社でも「韓国での地位向上に貢献した」という認識では一致している。

 その方氏は、担当の弁護士を通じて、「本社の内紛に巻き込まれた」と今回の解任は不当なものであると主張した。

 というのも、方氏をオリンパスに招き入れたのは、一連の不祥事で逮捕された菊川剛元会長。本社経営陣の間での“脱菊川”の流れに巻き込まれ、不当に解任されたという論陣を張っているのだ。

 さらに「私文書偽造の事実が判明したが、関連調査を継続的に進めているため、現時点でこれ以上詳しいことは伝えられない」(オリンパス)と詳細はいまだ闇の中だ。そのため、状況だけ見ると、まさに菊川氏の損失隠しを暴こうとしたマイケル・ウッドフォード元社長を解任したときと瓜二つということもあり、さまざまな憶測が飛び交っているのだ。

 とはいえ、オリンパス関係者によれば、「今回の一件は韓国法人の内部告発に端を発しており、性質がまったく異なる」と否定。近いうちに方氏に対して法的措置を取るとしている。

 再生途上で出てきた膿か、それとも第二の“ウッドフォード・ショック”なのか。国内外で事態の進展に注目が集まっており、ガバナンスの強化をうたうオリンパスからの一刻も早い詳細の公表と、真相究明が待たれる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

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